TM NETWORK
MAJOR TURN-ROUND at 東京国際フォーラム(2001/1/19)

国際フォーラムに来るのは、ライヴでは初めてだった。数年前にコンピュータ関係のイベントか何かで来た記憶はあるが、定かではない。会場は想像していた以上に綺麗に整備されていた。ダフ屋の数はハンパではなかったが(笑)。
入場するとそこにはグッズ売り場があり、既に長蛇の列。時間も押していたのでグッズはライヴ終了後に買おうと思い、会場内へ。会場は一見映画館のような作りになっていて、ステージには大きな何分割かで区切られた大きなスクリーンが設置してあった。
私の座席は1階38列29番。ステージまでの距離は思ったより近く感じた。少なくとも昨年7月の横浜アリーナの時よりは。
座席に着いて開演を待っていると、先に着いていた友人が私の分のグッズまで買ってきてくれた。しかも木根さんのサイン入り小説本まで・・。多謝 m(_ _)m。

開演予定時刻の18時30分を15分ほど過ぎた頃、流れていたBGMが次第に消えていくとともに照明が暗くなっていく。無論場内からは歓声があがる。今まで数多くのライヴを観てきたが、オープニングの瞬間はいつもゾクゾクする。この雰囲気がたまらなく好きだ。

オープニングはWORLDPROOF。ニューアルバム「MAJOR TURN-ROUND」のオープニングを飾っているインストの曲だ。海に潜るようなボコボコっという音がしたかと思うと、車のエンジンのような音が鳴り出す。このときステージ上はまだ暗かったが、小室哲哉のシルエットが見えていたので客席からは既に歓声があがっていた。

アルバムと同じ流れで、そのままIGNITION,SEQUENCE,START(以降、"I.S.S")へ。イントロが流れるとともに、ウツのシルエットが映し出される。私はここでスクリーンが透明状態になっていることに気づいた。スクリーンにはCGと実写を織り交ぜた超美麗な映像が映し出されているのにも関わらず、その奥にはウツ、そして先生達のシルエットが見えていたからだ。
追々述べていくが、今回のツアーでは映像の演出が凝りに凝っていた。ライヴに参加していない人にとってはこのレポートを読んだだけではとてもではないがライヴの雰囲気は伝わらないだろう。今回のライヴはDVDでリリースされる予定なので、今回のライヴに行きそびれた人はぜひ購入して観てもらいたい。
ウツがAメロを歌い終わると同時にスクリーンが上にせり上がり、ステージ上のメンバーの姿が明らかになった。位置取りはステージ中央はもちろんウツ。向かって左側に先生。右側に木根さんが位置取り、その後ろにサポートメンバーの面々が顔を連ねるという形だった(サポートメンバーは後ほど紹介します)。
I.S.Sはアルバムバージョンとほぼアレンジは同じ。したがって先生は初っ端からハモンドオルガン弾きまくり状態。木根さんはこのときはずっとギターを手にしていたが、曲によってピアノとギターを使い分けていた。また、今回のライヴではウツがかなりギターを弾いてたのにビックリ(笑)。

I.S.Sが終わると馴染みのあるイントロが流れてくる。STILL LOVE HERだった。会場からは一部悲鳴のような歓声もあがっていた(笑)。TMの曲の中では珍しく、季節感(冬)を感じさせる曲だ。個人的には「WINTER COMES AROUND」を演奏してくれることを期待していたのだが、「STILL LOVE HER」も同じくらい好きなので良しとしよう(笑)。
印象に残っているのは間奏の木根さんのハーモニカ。その音の美しさに場内からも歓声があがる。間奏で歓声があがるのも珍しい。それほど木根さんのハーモニカは素晴らしい音を出していた。

演奏が終わりかけるとステージを覆い隠すようにスクリーンが下りてきた。演奏が終わると場内は拍手と歓声に包まれる。すぐに照明が暗くなり、一瞬の静寂。そしてMAJOR TURN-ROUND T FIRST IMPRESSIONへ。真っ暗なスクリーンに白く描かれた大小3つの円がクルクルと回っていた。イントロの先生の静かなエレピに合わせ、優しく歌い始めるウツの姿が印象的だった。
私が今回のツアーで気になっていたことのひとつが、この「MAJOR TURN-ROUND」である。この曲はトータルで30分を超える壮大な曲。果たしてこれを完全にライヴでやってくれるのだろうか、という点で注目していたのだが、見事にやってのけてくれた。
ウツが「in a cage...」と歌うところで「I'm in a cage」,「Midnight TV show」,「famous anchor man」,「Red or White?」,「Judge me」そして「missing you...」といった歌詞がスクリーンにも映し出される。なんてカッコイイ演出だ。
U SECOND IMPRESSIONではまさに小室哲哉の独壇場。これでもかというくらい終始ピアノプレイに徹し、観客を魅了した。キーボードひとつでこれだけ観る者を惹きつけることができるのは世界を見渡してもそういないだろう。
しかし、アルバムを聴いた人にならわかるだろうが、この「MAJOR TURN-ROUND」をライヴで演奏することにどれくらいのクオリティが要求されるのか・・・、考えただけで気が遠くなりそうだ。とりあえず私はいくら時間をかけても絶対に無理(笑)。
V THIRD IMPRESSIONでは再びウツがギターを持って登場。サビでは突然物凄い数のサイリウム(蛍光ボールのようなもの)が観客席に降って来た。あいにく私の席までは届かなかったが、受け取った人達は皆それを手にして手を横に振ったり縦に振ったりしてアクションを取っていた。
曲の終わりでスクリーンに映し出された「Turn round」,「I will do that.I can do that.」の文字が印象的だった。(「Turn round」という意味に関して小室哲哉は「巻き戻す」とか「原点に返る」という言葉を使っている。さらにそこから未来へと向かっていくのが今のTM NETWORKなのだと。プログレに注目した理由もそこにあるようだ。詳細は今回のツアーパンフに小室哲哉の長文メッセージが載せられているのでそれを読んで欲しい。実に興味深いことが書かれている)。

演奏が終わり、ウツがマイクで囁くように「どうもありがとう」と話すと客席から大歓声があがった。

会場がややどよめきにつつまれている中、PALE SHELTERへ。今回のアルバムの中で私が一番好きな曲だ。さすが木根さん。あなたがTMにいて良かったです(笑)。ここでのウツはまさに「熱唱」という言葉がピッタリ。他のどの曲よりも一番声量が出ていたように思えた。この曲が好きな私にとってはそれがまた嬉しかった。

続いてWE ARE STARTING OVERへ。これも木根バラ。サビの部分ではスクリーンに「I'VE JUST COME BACK TO YOU」の文字が奥から手前へ迫って来るように映し出され、逆に「WE ARE STARTING OVER」の文字が手前から奥へと消えていった。さきほども述べたが今回のツアーでは映像演出が素晴らしかった。「音」、「言葉」に「映像」を加えて我々に強烈なメッセージを投げかけていた。

演奏が終わると先生が一人でシンセを弾き始める。そこへ聞き覚えのあるパーカッションの音がフェードインしてきた。演奏を聴いているうちに次の曲が明らかになってきた。私はまさかと耳を疑ったが・・・。なんとELECTRIC PROPHETが始まった。しかもアレンジはかなりオリジナルバージョンに近い。私は終了前のTMのライヴには行ったことがないので、生エレプロはもちろん初めてだった。しかし実際に聴いたことはないものの、この曲はライヴの最後に演奏されることが多いという話しを何度も耳にしたことがあるので、まさかライヴの中盤で演奏されるとは思ってもいなかった。
ウツが「Crete Island」とAメロを口ずさむと客席からは思わず拍手と歓声があがる。気づいていた人もいるかと思いますが、このホームページのタイトルはこの曲の歌詞から取ったものです(笑)。
ちなみにこの時の私はちょっとヤバかったです。完全に自分の世界に入ってしまって、涙ぐんでました(笑)。

続いては聴き慣れないシンセの音が流れてきたので「新曲か?」と思ったが一瞬の沈黙の後、MESSAGEのイントロが流れてきた。ここではスクリーンに「記録」と「記憶」をテーマにした3人の会話のやりとりが流れ出した。しかもかなり長い(笑)。正直言ってこのときはスクリーンに目がくぎ付けになっていた。以下、スクリーンに流れていた3人の会話の模様を一部抜粋。
TK:2001年。
UTSU:夢だった21世紀。
KINE:鉄腕アトムの時代だ。
TK:あのころに夢見た21世紀とは?
UTSU:車は空飛んでると思ってたね。
TK:石油ストーブなんてもうなくて。
TK:月にはもうヒルトンホテルなんかが建ってたね。
UTSU:そう、もう国境もなくて。
KINE:でも、現実はまだまだ。
TK:じゃあ、未来から見た21世紀は?
UTSU:饒舌な街。
KINE:分岐点。
    :
TK:忘れられないといえば、大阪初日。
KINE:もうどうしようかと思ったよね。
UTSU:それも今になれば笑い話。
TK:それに比べて今回のはどう?
KINE:いい感じだと思うよ。
UTSU:進化してる。
TK:初日の録音したMDと聴き比べてみたいよね。
UTSU:聴き比べていいの?
TK:それくらい進化してるってことだよ。
    :
TK:仙台はいつ以来?
UTSU:EXPOが1992年2月だから9年ぶりになるね。
    :
UTSU:北海道は?
TK:92年のEXPO以来だから、9年ぶりだね。
KINE:札幌に限って言えば、その1ヶ月前。
UTSU:北海道のどこだっけ?てっちゃんが倒れて。
KINE:薄氷を踏む思いをした記憶が。
UTSU:今回は倒れてないよね?
KINE:と、思う?
TK:その節はご迷惑をおかけしました。
UTSU:そんな、いまさら・・・。
KINE:持ちつ持たれつでしょ。
    :
TK:名古屋はもいろいろと思い出深いよね。初めてやったラジオもここだったし。木根は特にね。
UTSU:夢だったじゃん、ラジオで話すの。
KINE:そうだね、夢がかなったんだもん。
TK:そのときの記録も、どこかに残ってるんだよね。
    :
TK:ツアー・ファイナルは東京。
KINE:東京は94年以来だね。
TK:あのときの記録も、残ってるよね。
UTSU:CDとかビデオ、DVD。
    :
TK:・・・3日間?なにしようか。
KINE:いろいろ、できるよね。
    :
TK:目に見えないものって?
UTSU:波の形。
KINE:8月の匂い。
TK:見えるものは?
    :
KINE:記録とは?
UTSU:アルバムに貼った写真。
TK:じゃあ記憶は?
UTSU:頭の中に焼きつけた光景。
    :
TK:僕らの一番最初のライブの記録もどこかに残ってるんだよ。
KINE:記録は残るけど、記憶は残らないよね。
UTSU:だから儚いんだ。
TK:はかないって、人の夢って書くんだね。
    :
TK:記憶が癒してくれるものもあるから。
    :
UTSU:前向きな巻き戻し。
TK:じゃあ、ちょっと過去まで巻き戻してみようか。記憶と、記録を・・・。
このメッセージが流れ終わり、ふとステージに目をやるとなんとメンバー全員跡形もなく消え去っていた(笑)。そしていつのまにかオルガンやらマイクスタンドやらがスクリーンの前にセットされていた。これはひょっとして・・・。

そう思った次の瞬間、予想通りメンバーがステージの最前列に姿を現した。アリーナの前の観客から手が届きそうな距離だ。無論場内は大歓声に包まれる。メンバーは笑顔で手を振ってその声援に応えていた。
そしてCUBEへ。先生がオルガン、木根さんはピアノ。それにドラムを除いたサポートメンバーで演奏が始まった。ドラムの山田さんはスクリーンの後ろでドラムを叩いていたようだ。
ここでも映像演出が本当にキレイ。網のようなCGが滑らかに動いたりCUBE状の物体がいくつも飛び出して来たり・・・。
1番のサビを歌い終わるとウツがステージから去る。どこに行ったのかと思ったら、ラストにスクリーンの向こう側に出てきて、ちょうどオリの中に閉じ込められたようなCG(?)の中で歌っていた。そして「out of my tiny and empty cube...」と歌い終えたところでスクリーンが上がり、ステージ上が明るくなる。メンバー全員手を振ってステージから去っていった。ほとんどの観客達が「え?嘘?もう終わり?」と思ったに違いない。実際私もその一人だった。ライヴが始まってからまだ1時間強しか経過していない。こんなに早くアンコール前のステージが終わるのは異例だ。その分私はアンコールでの彼らの演出と演奏に密かに期待していたが、そんな私の期待をいい意味で彼らは裏切ってくれた。私の期待していた以上のことがアンコールで起こったのだ。

5分ほど経過しただろうか。暗くなっているステージで、一人、キーボードセットに向かう人影が見えた。小室哲哉だ。場内からもそれに気づいた人が何人かいたようで、あちこちから歓声があがり始めた。 ピコピコしたシーケンスの音に合わせ先生がリズムを取りながらシンセを弾き始める。すると間もなく、これまで幾度となく聴いて来たオケヒットが。GET WILDだ。これまではバラード系の曲が中心だったため、私を含め客席の人達は皆、待ってましたとばかりに踊り騒ぎ始める(笑)。
しばらく先生のシンセソロが続いた後、ウツがステージ上に登場。私は気がつかなかったのだが、木根さんもいつのまにかステージ上に姿を現していた。サポートメンバーはまだ姿を見せていない中、GET WILDをBGMにウツが「元気ですか?楽しんでますかー?!」と叫ぶ。ここまでMCがまったくなかっただけに、ウツの呼びかけには観客も敏感に反応していた。

ウツ「それではここで、素晴らしいサポートメンバーを紹介します!」

今回のサポートメンバーは以下の通り(紹介順)。
・山田亘(Drums)
・葛城哲哉(Guitar)
・春山真吾(Bass)
一人一人紹介されるたびにステージ脇から姿を現し、ウツとハイタッチやら握手やらしていた。葛Gのときが一番歓声が大きかったと思う。

メンバー全員そろったところでそのままGET WILDが始まった。ライヴではほぼ毎回演奏されているが、当然のことながらアレンジは毎回違っている。(現在のTMNETWORKによってアレンジされた昔の曲は、次のTMNETWORKの活動のヒントにもなっていると私は思っている。)
サビでは当然のことながら「wild & tough」の大合唱。これまで大人しかった客席が皆ウソのように盛り上がっていた。

GET WILDが終わると息つく間もなく先生のピアノソロへ。弾いているのはなんとTIME TO COUNT DOWNだ。静かな先生のピアノソロが終わり、例の「タァイム・・・トゥ・・カウントダウン」という声が聞こえると同時にステージ上は花火が大爆発。このときの会場の盛り上がり様はとても言葉では表せるものではない。私も極度の興奮と感動で頭の中が真っ白になっていた(笑)。このおかげで私はTIME TO COUNT DOWN中毒に陥ってしまったようだ。このライヴレポートを書いている今もTIME TO COUNT DOWNを聴いている(笑)。
途中、サビが転調する部分でまったく聴いたことのないアレンジが加わっていた。はっきりとは覚えていないがテクノやユーロビートに近いアレンジだったように思う。思えば昨年の横浜アリーナでの「Children Of The New Century」のアレンジもユーロビート調だった。そういえば小室哲哉自身も、今回のアルバムを作成した際のインタビューで「次はもうちょっと踊れる曲を・・・」と言ったとか言わなかったとか(笑)。
さらにこの曲の中では思いもよらないファンサービスが。どこからかメンバーがサッカーボールを持ち出し、サインを入れて客席に蹴り入れたのである。まさにRHYTHM REDツアーの再現のようだった。さらにさらに先生に至っては何とキーボード(ショルダーキーボードではない)をまるまる一台客席に放り投げるという、とんでもないことをやっていた(笑)。

TIME TO COUNT DOWNが終わると、サポートメンバーがステージ上から去っていった。照明が明るくなり、客席からは大歓声があがっている。観客も皆わかっていたようだ。お待ちかねのMCが始まることを。

ウツ「改めましてこんばんは!TM NETWORKです・・・って1人いませんが(笑)。」
客席「(笑)」

ふとステージ上を見るとなぜか木根さんの姿が見えない。どうやらギターを取りに行ってたらしい(笑)。

ウツ「まぁ初期の頃はいなかったからね!」
客席「(大爆笑)」
ウツ「えー、去年から9年ぶりにツアーを始めて、いよいよ東京に乗り込んできたんですが・・・。」

ここでステージ脇から木根さんがギターを抱えてひょっこりと登場。

ウツ「あ、おかえり(笑)。」
客席「(笑)」
ウツ「えー、9年ぶりのツアー、そして9年ぶりに、アルバムも出しまして・・・。」
客席「(拍手)」
ウツ「みなさん気に入っていただけましたか??」
客席「(拍手喝采)」
ウツ「今回の新作は、ウチのリーダーも大絶賛!のアルバムになりました。」
客席「(拍手喝采)」
ウツ「でもすごいっすよね。普通30何分もの曲考えるかっつーの!ね(笑)」
客席「(笑)」
ウツ「で、僕もね、その、第一印象から第三印象を作ってる過程を聞いたんですけど、(小室先生が)実際に打ち込んだり演奏したりしながらね、「今何分くらいなんだろう」ってスタッフに聞いたら、「14分です」って言われて、「あーあと20分もあるのかー」って言ってたって(笑)」
客席「(笑)」
ウツ「ちょっとずつ、切ったり貼ったりしてできたらしいですけどね。まぁ、そういった大作もあり、木根くんお得意のね、バラードもあり。気に入っていただけたんじゃないかと。」
客席「(木根さんに対して拍手喝采)」
ウツ「ステージ演出に関して言うと、まぁ今回、TMらしいといえばらしいんですが、そういう演出もですね、そういうアルバムに沿って、またとんでもない演出を考えましてですね(笑)。」
客席「(笑)」
ウツ「まさかオリの中に閉じ込められるとは思わなかったよ(笑)」
客席「(爆笑)」

ここでいう「オリの中」というのはCUBEでのステージ演出のこと(詳細は前述通り)。

ウツ「でも、全然そういう・・・退屈しない演出になってると思うんですが、楽しんでいただけました?」
客席「拍手喝采」
ウツ「いいねいいねいいねー!(笑)」
客席「(笑)」
ウツ「で、まあ今回もいろいろな地方へ行きましたねー。3人で各地回ったんですが、それなりに楽しいですね。ひさびさに集まると結局は、ファミリーレストランですか?(笑)」
客席「(爆笑)」
ウツ「もちろんハンバーグステーキとか。」
客席「(爆笑)」

このネタでこんなに盛り上がるってことはやっぱり客席は昔からのファンが多かったようだ(笑)。

ウツ「必ずそこにたどりつくと。3回ほど行きましたかね?地方で。リーダーの要望で。」
客席「(笑)」
ウツ「サポートメンバーも葛Gとかわたるちゃんとか。当時のね、9年前のTMファミリーの人たちなので、夜はけっこうドンチャンドンチャンと(笑)。」
客席「(笑)」

確か横浜アリーナのレポートでも書いたと思うが、ウツのMCはほんとに独特で温かい雰囲気を作り出す。これはもうウツの才能と言っていいだろう。

ウツ「(突然)あ!そうだ思い出した!さっきね、楽屋でビデオ観てたんですよ。えっとね、あれは八十 ・・・五年?うん。85年のね、DRAGON THE FESTIVAL。」
客席「(おおー!)」
ウツ「そのときのビデオをスタッフの人が持ってきてくれて。ライブの絵じゃなくて、リハーサルの映像とか。あと当時ね、小室センセイがビデオを買ってね。それでとりあえず、なんでもいいからとりあえず撮るというね(笑)。」
客席「(笑)」
ウツ「木根が本を書いてですね、コントまで撮っちゃった(笑)。」
客席「(笑)」
ウツ「それが今ごろ出てきてですね。」
客席「(観たーい!!)」
ウツ「見たいでしょう?ここすぐ(後ろのスクリーン)に映るんですけどね。」

ウツがこんなこと言っちゃうもんだからもうお客さんは皆「観たい観たい!」ってすっごい歓声をあげていた(笑)。

ウツ「えー、すごく懐かしい映像だったね、木根くん。」
木根「・・・こんばんは。」
客席「(爆笑)」

なぜか木根さんが一言発しただけで客席は大爆笑(笑)。ほんとにいいキャラしてます。木根さん。
以降、木根さんとウツのトークライヴ状態に(笑)。

木根「いやぁ、B'zの松本君も出てるんですけどね。」
ウツ「そうですね。」
木根「松本に以前、そういうビデオがあるぞって話をしたら、すっごい顔して「・・・買い取るよ」。」
客席「(爆笑)」
木根「そう?じゃあ100万でどう?って言ったら「そんな安くていいのか!?」って。」
客席「(爆笑)」
木根「(松本が)「そんなものが流出したら大変だ」ってね。」
客席「(笑)」
木根「でも松本君もね、みんな若い。」
ウツ「若いっすね。」
木根「で、メガネがでかい。こーんな素通しのメガネでなんでこんなでかいんだって。」
客席「(笑)」
ウツ「すーごかったですねー(笑)。」
木根「なんだったんだろうね、あれは(笑)。(客席に対して)DRAGON THE FESTIVALツアーに行った人(いる)?」

数名ほど手が挙がった。周りからは驚きの声があがっている。

木根「うっそ!いくつだよお前たち!!」
客席「(大爆笑)」
ウツ「10人はいるね。」
木根「日本青年館に行った人は??」

またしても数名の手が挙がる。周りの客席からは再び驚きの声が。

木根「あ、いるよー。」
ウツ「(客席の一人を指差し)っていうかね、あいつ、(久保)こーじだよ(笑)。」
木根「こーじはいないって。あいつは出てるんだ(笑)。」

どうやら会場には久保こーじが観に来ていて、このときに手を挙げたらしい(笑)。

木根「しかしそんな昔からねー。ありがたいにもほどがあるぞ!!」
客席「(爆笑)」
ウツ「衣装がすごいよね。アラビアのロレンスみたいな格好ですよね(笑)」
客席「(爆笑)」
ウツ「あとピーターパンのクック船長みたいな(笑)」
客席「(笑)」
木根「あ、テレビ局の衣裳部屋で借りてきたやつね。」
ウツ「望遠鏡とか持って。」
木根「っていうかあいつ、演奏してなかったよ!(笑)いやぁ成長しましたね。」
ウツ「成長・・・したかなぁ・・・(笑)」
木根「まあ、みなさん(観客)もね、お老けになられて(笑)。」
客席「(爆笑)」
木根「もちろん僕達もですけど。」
ウツ「いやほんと懐かしかったですよね、あの映像は。」
木根「あれ、今度売ろう。」
ウツ「売るの??」
客席「(大歓声)」
木根「違うよ、松本にだよ(笑)。」
客席「(笑)」
ウツ「なんか、当時の懐かしい曲がまた耳に飛びこんできてね。フィー・・フィール・・・ライ・・?」
木根「FAIRE LA VISE(笑)」
客席「(爆笑)」
ウツ「あ、FAIRE LA VISE(笑)」
木根「俺あの曲好きだったんだけどなぁ。」
ウツ「(客席に)FAIRE LA VISE知ってます?」
客席「(知ってるー!)」
ウツ「(先生に対して)弾いてくれます?え?弾けない?(笑)」

ここから嬉しいことに「即興懐メロメドレー」が始まった(笑)。まずは木根さんがギターでFAIRE LA VISEを弾き語りで歌い始める。それに先生がピアノを重ねていく。客席からはため息のような喜びの声。

ウツ「(拍手に包まれながら)当時の曲は、すごいいい曲がたくさんありますね。」
木根「あの頃は小室哲哉も、王子様みたいだったよねぇ?(笑)」
客席「(爆笑)」

先生は苦笑いしている(笑)。

ウツ「うん。なんかね、帽子被って。下はね、もちろん白いタイツ!(笑)」
客席「(爆笑)」
木根「(手を広げて)こういうやつね。「待ってぇ〜〜〜(←先生のマネ)」とかやってたよね(笑)」
客席「(大爆笑)」
ウツ「当時の曲なんて覚えてないし、弾けないでしょ?」

と先生に振るウツ。すると先生がGIRLを弾き始めた。さらに今度はそこへウツのボーカルが入る。無論客席は大歓声に包まれる。1フレーズ歌い終わるとウツがぼそっと笑いながら

ウツ「ちょっとキーが違ってたような気がするけど(笑)」

次はACCIDENT。もうファンには涙モノだ(笑)。「銀色の長い髪♪」と歌うウツの声は普段あまり出さないような声質だった。そして今回のメドレーの中でも一際歓声が大きかったHUMAN SYSTEMへ。ここではウツのボーカルはなかったが、先生のピアノと木根さんのギターに合わせて指揮者のマネをしていた(笑)。客席からは笑いが混じった大歓声。さらにSEVEN DAYS WARへとメドレーは続く。木根さんはギターが入りづらかったようで、

木根「キー教えてよ(笑)」

そしてSEVEN DAYS WARからそのまま流れるようになんとTIMEMACHINEへ。アレンジはファイナルのときとほぼ同じだが、終わり方がかなり違っていた。さすがに客席もこのときばかりは物音ひとつしないほど静まり返って、皆演奏に集中していた。

演奏が終わるとウツが「どうもありがとう」と言って観客に手を振る。そしてメンバー1人ずつが持っていたタオルを客席に放り投げ、大歓声に包まれながら3人はステージを去っていった。



TM NETWORK
MAJOR TURN-ROUND at 東京国際フォーラム(2001/1/19)

  1. WORLDPROOF
  2. IGNITION,SEQUENCE,START
  3. STILL LOVE HER
  4. MAJOR TURN-ROUND
       T FIRST IMPRESSION
       U SECOND IMPRESSION
       V THIRD IMPRESSION
  5. PALE SHELTER
  6. WE ARE STARTING OVER
  7. ELECTRIC PROPHET
  8. MESSAGE
  9. CUBE
    Encore.
  10. GET WILD
  11. TIME TO COUNT DOWN
  12. FAIRE LA VISE - GIRL - ACCIDENT - HUMAN SYSTEM - SEVEN DAYS WAR
  13. TIMEMACHINE


-おわりに-

ライヴが終わって時計を見ると、20時50分を過ぎていた。アンコールだけで1時間もやっていたことになる。曲数以上に内容の濃いライヴであったことは言うまでもない。ライヴのことはレポートに散々書いたので、ここでは現在とこれからのTMについて少し述べたいと思う。

今回のアルバムに関しては賛否両論あるだろう。昔からTMの作品は発表されるたびにファンやメディアの間で様々な論議を醸し出してきた。そして、今回のアルバムのキーワードの1つが「プログレ」である。これは小室哲哉自身が若かりし頃に追いかけていた音楽で、一般的にはミクスチャー、またはロックとクラシックが融合したジャンルとも言われている。

今回、その「プログレ」アルバムはインターネットを中心に販売され、普通にレコード店に並ぶということはなかった(実際はTSUTAYAと新星堂のみでは売られていたが)。よって、全国でどれくらいの人がこのアルバムを聴いたのかはわからないが、果たして何割の人達が共感を覚えただろうか。(こんなことを言ったら私が今回のアルバムが気に入らなかったように聞こえるかもしれないが、私の中で今回のアルバムは大ヒットです(笑))。

少し話しをライヴに戻すが、正直、今回のライヴは昨年の横浜アリーナでのライヴに比べると、ある意味マニアックなライヴだった。別の言葉で言うならばレベルが高いライヴ。音質、映像のクオリティはもちろんのことだが、それ以上に訴えかけてくるメッセージ。これを理解できた人はこの日の観客の中にどれくらいいただろうか。私には昔を懐かしむだけのファンが多かったように思えた(もちろんそうでないファンの方が多かったとは思うが)。これはTMだけでなくすべての再結成バンドが立ち向かわなければならない問題だが、新しいTMを求めるファンもいれば、昔を懐かしみたいというファンがいる。ただ、懐かしむ(振り返る=Turn Roundする)ということももちろん必要だが、当然ながらその間にTMはどんどん新しいものを作っていくわけで。そしてファンはそれを受け入れる準備をしていかなければならないと思う。

昔を懐かしむだけで、今のTMの曲を聴こうとしない人がいることは私も悲しいし、TM本人達もきっと悲しく思うだろう。現在のTMを受け入れろとは言わない。人それぞれ音楽の趣味に違いがあるのは当然なのだから、今回の「MAJOR TURN-ROUND」というアルバム、もう全然ダメ、という人も当然いるだろう。それはそれで全然構わないと思う。当たり前のことだ。私だっていつかTMの作る音楽が全然受け入れられない時が来るかもしれない。ただ重要なのは、「理解しようとすること」。進化するTMに、ついて行こうと努力すること(「努力」までは言い過ぎかもしれないが(笑))。21世紀のTMファンにとっては、各々そういう意識が必要なのではないかと思う。

・・・と結構不安めいたことばかり述べてきたが、私はTMの未来に関してさほど不安は抱いていない。理由は言うまでもないでしょう。だって、TMなんだから。他の誰でもない、あの3人がいるんだから、大丈夫だと思ってます。あ、ただひとつ不安なのは、今後新曲はいつ出るんだろうってことかな(笑)。
では、今年中に新曲が聴けることを願って、このへんで。
そして、同じ時間と空間を共有したFANKSの皆さん、お疲れ様でした。また次のライヴで会いましょう。
2001.1.21 Y.Tanaka


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