THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
LAST HEAVEN TOUR at 幕張メッセ展示場ホール(2003/10/11)
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- はじめに -
生涯最高のライブでした。
ライブから数日経った今でもそう断言できます。それは、今回が最後だから、解散ライブだから、というわけではなく、ライブそのものに感動しました。
幕張メッセという巨大な空間で、3万7000人のオールスタンディングという前代未聞のライブ。そして何と言っても3万7000のファン一人一人がステージ上のメンバーにエネルギーをぶつける。それにメンバーが超人とも思えるライブパフォーマンスで応える・・・。
ライブというのはアーティストが創るものではなく、アーティストとファンが一体となって初めて創り出すものなんだと。そして、アーティストのエネルギーとファンのエネルギーがぶつかり合うという相乗効果により、いかに素晴らしい空間を生み出すのかということを、私はこの日、生まれて初めて、身を持って体験することができました。こう言っては他のアーティストの方に失礼かもしれませんが、極端な話、今までのライブは全て「ライブのようなもの」だったと思えてしまうような・・・。繰り返すようですが、自分のライブ人生の中で間違いなく最高の経験となりました。
それでは、ライブレポートをお楽しみください。
2003年10月11日、それは私にとって特別な日となった。
thee michelle gun elephant、今年2度目の全国ツアー「LAST HEAVEN TOUR」最終日、それは文字通り彼らのファイナルライブとなった。会場は幕張メッセ展示場ホール。
この日は中央線でトラブルがあったせいもあり、最寄駅の海浜幕張駅に着いたのは17時30分ちょうどだった。開演は18時30分。私は待ち合わせた友人とともに足早に会場へと向かった。
会場近くまで行くと、既に入り口まで長蛇の列が出来ていた。距離にして1km以上はあったと思う。最後尾に並んでから会場に入るまで、結局30分以上かかった。しかしいくらファイナルとはいえ、これだけのファンの数を目の当たりにすると、ミッシェルの人気の高さが伺える。
18時過ぎ、ようやくリストバンド交換所に到着。この日のライブはチケットと引き換えにリストバンドが渡され、入場は全てリストバンドの色によって管理されていた。私はA−3ブロック。黒いバックに青いスカルと文字でツアータイトルが刻まれたリストバンド。それだけでもカッコ良すぎて、僕はすでにシビれてました(笑)。
ちょうど18時30分、ようやく場内のAブロックに到着。会場内は既に物凄いファンで埋め尽くされていた。先にも述べたが、3万7000人のオールスタンディングという空間はまさに未体験ゾーン。見たこともない光景がそこには広がっていた。ステージセットは極めてシンプル。置かれているのはただミッシェルが音を出すためだけの機材、そしてステージ両脇にスクリーンが2台設置されていただけだった。彼らにとって余計なセットなど必要ないのだ。
そしてスクリーンに「Go Last Heaven」の文字が映し出されるとそれだけで場内は大歓声に包まれる。
開演から30分ほど過ぎた19時。場内のライトが落ち「ゴッドファーザー」のテーマ曲が流れ出すと凄まじい大歓声があがる。そしてメンバーがステージ脇からゆっくりと登場。キュウ、ウエノ、アベ、そしてチバ。順番に一人ずつ登場するたびに、ファンから叫び声があがる。薄暗いステージ上でそれぞれの楽器を手にし、黙々と準備する彼ら。まだ何もしていないのに、私は目は彼らに釘付けとなり、鳥肌が立っていた。
そして注目のオープニングナンバー。そのイントロを聴いただけで絶叫してしまった。まさかまさかのドロップ。一体誰がこのオープニングを予想できただろうか。オープニングからエンジン全開で絶叫するチバのボーカル。初めて生で聴いたその声に私は思わず全身が震えた。
そして2曲目はなんとゲット・アップ・ルーシー。会場内が一気にヒートアップし、全員がタテノリ状態となる。サビはもちろん「ゲットアップルーシー」の連呼。
さらに演奏が終わるとすぐさまキュウのカウントとともにバードメンへ。ここで私はもう頭がおかしくなってしまった。「FLY....FLY.....」と文字通りどこかへトんで行ってしまいそうな快感にとことん酔いしれる。
さらにデッド・スター・エンドで会場が一体となり「宇宙の果てまでブっ飛んで行けー!!!!!」と絶叫。興奮のあまり血管がブチ切れそうになる。
チバ「ハロー!よく来たね」
短いMCからストロベリー・ガーデン。特に初期の彼らの曲はこのような陽気な曲が多い。「Shalala...」と笑顔で歌い上げた後はアッシュ、そしてフリー・デビル・ジャムへ。まさかキュウのボーカルソロが聴けるとは思わなかったためここでも絶叫。この時点で私はもう既に通常のライブ2本分ほどの体力を使い果たしていた。
そしてようやくニューアルバムからデッドマンズ・ギャラクシー・デイズへ。「銀河を突き抜けて宇宙を手に入れろ」。会場内はまさに宇宙のような異次元空間と化していた。
ちなみに今回のツアーグッズでチバがデザインの「Break through THE GALAXY」Tシャツが売られていたが、あまりのカッコ良さに一目ぼれして即買い決定。普段着として着まくってやります。もう寒くなってきちゃったから来年の夏にね(笑)。
続いてはまたしてもデビューアルバムからI was walkin' & sleepin'。あまりに懐かしすぎてどのアルバムの曲だか忘れていた。思わず飛び跳ねたくなるような演奏に誰もが笑顔になる。
演奏が終わるとチバがタンバリンを手にして叩く。続いても1stアルバムからブラック・タンバリン。さすがにライブ慣れしたファンが多かったため、手拍子もピッタリと合う。
そしてまたしても予想だにしなかった曲、深く潜れへ。青暗いライトが照らされる中、3拍子のゆっくりとしたメロディから一気にハイスピードナンバーに切り替わる。その勢いを持続するかのようにカルチャーへ。「ハニーーーー!!!」でまたしても絶叫。彼らのライブはとにかく叫ぶことが多い、だからこんなにも楽しいんだと、後になって気づきました。
続いてはチバのタイトルコールとともにブギー。ここで私はようやくじっくりとステージ上のメンバーを観ることができた。それまではあまりに夢中に踊り狂っていたため、ステージを観る余裕すらなかったのだ。
するとチバがとんでもないことになっていた。滝のようにポタポタと流れ落ちる汗。あんなに大量の汗をかいている人はいまだかつて観たことがないというくらい。そしてふと気づくと、自分もかつてないほどの汗をかいていることに気づく。シャツをしぼると汗がポタポタとにじみ出てくる状態になっていた。
続く赤毛のケリーはまさに彼らにしか出来ない曲。疾走感の中にも哀愁が漂うメロディはまさに極上モノだった。そしてゴッド・ジャズ・タイムでは閃光のような照明とともに演奏され、ファンのエンジンにも再び火が灯る。
そしてこの日発売のラストシングルエレクトリック・サーカスへ。私はあえて事前にCDを買わず、ライブで初めて聴いたのだが、感動のあまり声を失った。
「俺達に明日がないってこと はじめからそんなのわかってたよ
この鳥達がどこから来て どこへ行くのかと同じさ」
なんていう歌詞を書きやがるんだ。さらにその歌詞がのっているメロディが素晴らしすぎる。最後の最後でどうしてこんなカッコイイ曲が作れるんだと、ただただ感動するばかりだった。
滝のような汗を流しながら、叫ぶように歌い上げるこの時のチバの姿、私は一生忘れないだろう。
そしてミッドナイト・クラクション・ベイビーで再び場内が噴火する。
私はもう体力の限界をとっくに過ぎていた。
何度後ろに下がって休もうかと思ったかわからない。
しかし、体の本能がそれを拒む。
絶対に下がりたくない。
絶対に最後まで見届けてやる。自分のエネルギーの全てをぶつけてやる。
そんな気持ちになれたのは、きっとミッシェルの魂を本能的に体で感じていたからだと思う。また、周りのファンからも同じ魂を感じたからだと思う。ライブを観ていてここまで強い気持ちを持ったのは生まれて初めてだった。そしていつのまにかそれは「快感」という二文字に置き換わっていた。
ライブはクライマックスへと突っ走る。ベイビー・スターダスト。もう体力がどうのこうのとか関係ない。力の限り叫び上げる。
そしてCDで何十回、何百回と聴いた力強いギターリフが響き渡る。スモーキン・ビリー。ここで私は失神寸前の興奮状態に陥る。チバがマイクをファンに向ける。3万7000人が「愛と!!いう!!憎悪!!!!」と叫ぶ。
この時私は気づいてしまった。これなんだと、自分がライブに求めていたものは。
ファン1人1人が、それぞれのやり方でエネルギーをぶつけている。男も、女も、老いも若いも関係ない。全てのファンが一体となり、アーティストとともに創り上げられたその空間は、まさに極上の”HEAVEN”だった。
何と言う快感。これ以上の体験は絶対に他では味わえないだろう。ライブで記憶をなくすほど興奮し、味わったことのない感動を覚えたのは自分のライブ人生史上初めてだった。
続いてはまたしてもイントロのドラムから絶叫。リリィ。もう声もガラガラで、頭もフラフラで何がなんだかわからない状態になっている。とっくに体力の限界は過ぎていた。しかし最初から最後まで飛び跳ねながら歌い上げる自分がいた。初めて自分の限界を超えられた気がした。
「サンキュー」と言ってメンバーがステージを去る。あまりにあっという間すぎて、まだ頭の中が真っ白な状態だった。ふと時計を観ると、時計の針が19時40分で止まっていた。どうやら踊り狂い過ぎて時計もぶっ壊れてしまったようだ。
場内からはアンコールの嵐。私はフラフラしながらも、何故か後ろに避難したり、絶対その場に座ろうとはしなかった。そして夢中でアンコールを求める拍手を繰り返していた。座って休んだりすることは自分的に許せなかったのだ。メンバーに対しても、ファンに対しても失礼な事だと思ったのかもしれない。実際、少なくとも私の周りには誰一人として座り込むファンはいなかった。全員が心からアーティストのアンコールを求めているのだ。なんと言う素晴らしい光景だろうか。
もはや普通のライブではアンコールは当たり前になっている。私も今まで参加したライブでは、「別に拍手なんかしなくても出てきてくれるよ」と、本当に心からアンコールを求めることなどなかった。しかし、この時ばかりは違った。「頼むからもう一度出てきてくれ!!」と、必死になって手を叩いていた。生まれて初めて、本物のアンコールを味わった瞬間だった。
そしてそのファンの気持ちに応えるかのようにメンバーが再登場。
チバ「どっか行こうぜ!」
大歓声に包まれながらGT400へ。「どっか行っちまえばいい」。彼らと一緒ならどこまででも突っ走って行けそうな気がした。
演奏が終わると穏やかなレゲエ調のメロディが流れ出す。「Oh〜Oh〜リボルバージャンキーズ」というコーラスを歌いながら揺れるファン。そして演奏が止むと「カモン!!マ・ク・ハ・リ・ロッカーーーーズ!!!」とキュウが叫ぶ。「うおおおおおお!!!!」というファンの叫び声とともにリボルバー・ジャンキーズへ。何度も何度も、力の限り叫ぶ。「歌う」などと生半可なモノではない。3万7000人の力の限りの「雄叫び」が場内にこだまする。
そしてクライマックス。キュウが「ジェニーはどこだあぁぁぁ!!!!!」と叫ぶとともに、ジェニーへ。私は興奮のあまり意味不明な叫び声をあげながら垂直飛びを連発。
もう、ここまで来てしまうととても言葉では言い表せない。これが最後のライブなんだとかはもはや関係なかった。そんなこと考える余裕すらない。ただ無我夢中でライブを楽しむ自分がいた。周りのファンもみんな思い思いにライブを楽しんでいた。踊り狂う者、叫びまくる者、ひたすらヘドバンする者・・・。特に女性ファンが皆、女であることを忘れているかのようにライブを楽しんでいたのがとても印象的だった。それはライブにロックンロールを求める自分にとって本当に嬉しかった。こんなにライブを楽しめたのは、ミッシェルがいたから、という理由だけではない。少なくともそういった周りのファンの人達が、最高にカッコいいロックなノリでライブを楽しんでいたからだと思う。
演奏が終わり、メンバーが退場するが再びアンコールの嵐。
そしてメンバーが登場。キュウは登場するなり客席にドラムスティックを投げ入れていた。そしてアベがギターを弾き鳴らす。
世界の終わりだった。ライブでも幾度となく演奏されてきた彼らのメジャーデビュー曲。私の周りのファンは泣いていた。しかし泣き崩れる者はいない。皆、しっかりと、メンバーの最後の姿を目に焼き付けるかのように、じっとステージを見つめていた。そのファンの姿も最高にカッコ良かった。
最後のサビで、感極まったのかチバが言葉をつまらせる。私の中でそこまで抑えていた感情が音を立てて崩れた。思わず涙があふれだした―――。
そして演奏が終わり、最後のライブが幕を閉じる。最後だからといって何も特別なことはなかった。ただひとつだけ違ったのは、いつも寡黙で、決してステージ上でマイクを握ることのなかったアベが「ありがとう」と喋ったことだった。思わずファンからは「うおおおおお!!!」と歓声があがる。
メンバーがステージを去った。しかしファンは誰一人として帰ろうとしない。
するとスクリーンにメンバーから最後のメッセージが映し出された。
「Thank You Rockers. I Love You Baby.」
大歓声があがる。
しばらくして「SATANIC BOOM BOOM HEAD」がCDの音源で流れてきた。場内の明かりは灯され、メンバーも去った場内。しかしファンはライブが続いているかのように踊り、叫び、ロックンロールしつづける。
曲が終わると、ようやく「ライブが終わったんだ」という現実に少しずつ気づき始めるファン達。息を切らしながら充実感にあふれているファンもいれば、ただ大粒の涙を流しつづけるファンもいた。
BGMに「NIGHT IS OVER」が流れる中、私は会場を後にした。
しかし私は会場を出る一歩手前でステージを振り返り、最後に、心の中で叫んだ。
「Thank You Rockers. I Love You Baby!!」
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
LAST HEAVEN TOUR at 幕張メッセ展示場ホール(2003/10/11)
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S.E. ゴッドファーザー〜愛のテーマ〜
- ドロップ
- ゲット・アップ・ルーシー
- バードメン
- デッド・スター・エンド
- ストロベリー・ガーデン
- アッシュ
- フリー・デビル・ジャム
- デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ
- I was walkin' & sleepin'
- ブラック・タンバリン
- 深く潜れ
- カルチャー
- ブギー
- 赤毛のケリー
- ゴッド・ジャズ・タイム
- エレクトリック・サーカス
- ミッドナイト・クラクション・ベイビー
- ベイビー・スターダスト
- スモーキン・ビリー
- リリィ
Encore1.
- GT400
- リボルバー・ジャンキーズ
- ジェニー
Encore2.
- 世界の終わり
S.E.bowling machine
SATANIC BOOM BOOM HEAD
NIGHT IS OVER
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-おわりに-
ライブに求めるもの、それは人によって違うと思います。ただ、僕が求めていたものに対して、今回のライブは完璧なまでに応えてくれました。もうこんなライブは二度と体験できないことを考えると、今でも心の中にポッカリと穴が空いてしまったような状態になっています。同時に、彼らと同じ時代に生まれてきたことを誇りに思います。
しかしこれで本当に解散してしまうのか?と思ってしまうほどの凄まじいライブでした。何故これほどのライブができるのに解散しなければならないのか。それはきっと本人達にしかわからないことなんでしょうけど。
ミッシェルは常にアクセル全開で突っ走ってきました。もう、いつエンジンが焼け焦げてもおかしくないというくらいのスピードで。でもタダでは終わらなかったんです。彼らの最後はエレクトリック・サーカスのジャケットそのもの。夜の荒野に燃え上がる炎はこの世のものとは思えないほど美しかった。最後の最後まで、震えるほどカッコ良く散っていったミッシェル。
私にとって彼らのライブは今回がまさに最初で最後となったのですが、ただひとつ後悔なのは、1998年、初めて彼らのアルバム「チキン・ゾンビーズ」を購入して以来、コンスタントに彼らの音楽を聴き続けていたにも関わらず、ライブに一度も足を運ばなかったこと。それだけが悔やまれます。でも、最後のライブだけでも参加できて本当に良かったです。
とにかく、レポート本文にも何度か書きましたが、ファンのライブに対する姿勢が素晴らしかった。だから今回のような素晴らしいライブを創り上げることができたんだと思います。
最後に、メンバーを含め、この日会場にいた全ての人達へ。
最高の夜をありがとう。この日のことは一生忘れません。またいつか、会う日まで。
2003.10.16 youhei
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