Mr.Children
Tour 2004 "シフクノオト" at 横浜アリーナ (2004/6/13)

ミスチルのライブに参加するのは2002年のDec21以来、およそ1年半ぶり。会場はあの時と同じ横浜アリーナ。新横浜駅から会場まで歩く道のりはほんとにあの時と同じで。「チケット譲ってください」のカードを掲げるファンの子もたくさんいて。ただ違ったのは、Dec21のときは真冬の寒さだったけど、今回は涼しくて心地良かった。天気にも恵まれたため、会場へ向かう足取りもいつも以上に軽かったように思う。

開演時間は17時。会場に着いたのはその15分くらい前だった。私の座席はアリーナA6列6番。この番号だからアリーナの結構前の方だろうとは予想していた。どこらへんなんだろうと胸の高鳴りを必死に抑えつつ、座席を探す。そしてたどり着いた場所は・・・ステージから向かって左端の方だったが、なんとアリーナ最前列だった。思わず感激のあまり声をあげてしまう。なんとか落ち着いて回りの状況を確認する。目の前にステージセットが準備されており、ステージの真上には天井から4つの巨大なスクリーンが吊るされていた。場内は赤い照明が照らされ、幻想的なBGMが流れている。

ただでさえプレミアチケットなのに、よりにもよってこんな座席で見れるとは・・・今年1年分の運をここで使い果たしてしまったようだ。でもそれも本望だった。予想通り、いや、予想以上に素晴らしいステージを目の前で目撃することができたのだから。

17時を10分ほど過ぎた頃、場内の照明が少しずつ暗くなる。とともに大歓声があがる。そして場内に穏やかなシンセの音色が響き渡るとともに、ステージ上のスクリーンに映像が映し出された。真っ白な世界の中にたたずむ一人の男。シルエットは真っ暗で、顔の表情もわからなかったが、風貌からして男だとわかった。目の前にはバスが止まっている。その男の手には「シフク」行きのチケットが握り締められていた。

ゆっくりと歩きながらバスの中に乗り込む男。すると場内から歓声があがった。ふとステージ上を観ると、何人か人影が見えた。メンバーが登場したのだ。物凄い歓声に包まれる中、ゆっくりとそれぞれの楽器を手にするメンバー。Mr.Children Tour 2004 "シフクノオト"が幕を開ける。

注目すべきオープニングナンバー。私は興奮する気持ちを抑えながら、必死に耳を傾ける。すると薄暗いステージ上からギターの音色が響いてきた。聴いたことのないフレーズだ。しかしこのコードには聞き覚えがある。過去、何度も何度も聞き倒した記憶が頭の中を駆け巡る。そしてある1曲が頭の中に浮かぶとともに、確信した。「まさか?!」と耳を疑う。しかしそれはまぎれもなく現実だった。そして誰もが聞き覚えのあるイントロが流れ出す。それとともに大歓声に包まれる場内。

終わりなき旅だった。なんてこった。毎回毎回彼らのライブの1曲目は驚かされるが、今回ほどビビったことはない。あのイントロが流れる中、少しずつ明るくなっていくステージを想像してみて欲しい。鳥肌が立った。「息を切らしてさ」と桜井さんがAメロを歌いだすと、またしても場内は大歓声。誰もが待ちわびていたに違いない。Dec21は一夜限りのライブだったため、行けなかったファンがほとんどだった。だからほとんどの人にとっては、2001年のPOP SAURUS以来、約3年ぶりのライブだったのだ。

ラストのサビで真っ白な照明がステージ上を照らす。もう1曲目から私の心はわしづかみにされていた。本当に久しぶりに聴いたが改めて曲の素晴らしさに脱帽した。

曲が終わり、拍手と歓声に包まれる中、またしても聞き覚えのあるシンセ音が。これは誰もがすぐにわかったに違いない。光の射す方へ。この流れはいつもライブ終盤で演奏されるパターンだ。それを初っ端から持ってきたというところに彼らの今回のライブに対する意気込みがうかがえる。

桜井さんが「バッティングセンター!!」と叫びサビに突入。それまで大人しく聴いていたファンも一気に大爆発する。私も思わず右手を突き上げ「WohWohWoh」と叫ぶ。最高に気持ち良い。これでもかというくらい、無意識に歌い上げる自分がいた。

そして次の曲で早くも私の興奮は頂点に達する。PADDLE。ようやく最新アルバムからの曲が顔を出す。サビに突入する前に桜井さんが「ヘイ!!」と叫び、マイクを観客に向ける。ファンは「行こうぜ!!」と叫ぶ。すると桜井さんがステージ中央から私がいる側へ走ってきた。周りのファンからは悲鳴のような歓声があがる。そして桜井さんがまさに私の目の前に立ち止まり、歌い上げる!マイクをこちらに向けながら、最高に楽しそうな笑顔を見せる。

心臓が止まりそうだった。ほんとに数メートル、手を伸ばせば届きそうな距離にあの桜井和寿がいたのだ。最前列だったから目の前に隔てるものは何もない。ただ目の前に立って歌っている桜井さんを、しっかりと心の奥に焼き付けた。桜井さんの笑顔は、ほんとにTVや雑誌で見たまんまだった。笑うと目が一層細くなり、目尻にはシワが立ち、白い歯がこぼれていた。いやー、あんなもん目の前で見せられたら男でも惚れちゃうよ(笑)。

一旦はステージ中央に戻っていったが、曲のラストのサビでまたしても桜井さんが目の前にやってきた。あんなに我を忘れて興奮したのは自分のライブ史上初めてかもしれない。ただ無我夢中で桜井さんに向かって右手を突き上げながら歌い上げていた。

曲が終わった。私はあまりの衝撃で呆然としていた。ふと隣の友人を見ると感激のあまり失神しそうになっていた(笑)。

桜井「どうもこんばんばミスターチルドレンでーす!!!!!」
観客「(歓声)」
桜井「えー、今日はなんか凄いね。後ろまで(お客さんが)入ってる。お尻までよく見えるでしょ?(笑)」
観客「(笑&歓声)」

普通横浜アリーナはステージ裏にはお客さんは入れないのだが、この日はステージ裏までギッシリ観客が入っていた。つまりステージ上のメンバーは360℃、ファンから囲まれていたことになる。

桜井「次は・・・たぶん、みんな知ってる曲。一緒に歌ってください。」

するとJENがドラムをたたき出す。聴いたことのないフレーズだった。しかし次の瞬間あの曲のイントロに切り替わった。Innocent World。場内はこの日一番の大歓声に包まれる。桜井さんがマイクをファンに向ける。桜井さんは一切歌わず、場内には「黄昏の町を背に・・・♪」と、美しいファンの歌声だけが響き渡る。Bメロでマイクを握って一緒に歌うが、サビに入る瞬間「ヘイ!!」と再びマイクを向ける桜井さん。メンバーとファンとの掛け合い。それはなんとも言えないシフクの一時だった。

桜井「えー・・・いきなり、ヒットメドレーを4曲やってしまいました。34,5の体にはちょっとツライです(笑)。」
観客「(笑&歓声)」
桜井「ちょっとここで、落ち着いた感じのやりましょうかね。じゃあラヴソングを。」
観客「(歓声)」
桜井「とその前に、今日はちょっと、恋の話でもしようかな、と。」
観客「(歓声)」
桜井「長くなるから椅子も用意しちゃってね。まぁ長くなるからどうぞどうぞ。」

そう言ってメンバーに着席を促す桜井さん。素直にメンバーは着席していました。僕の周りのファンの人達も何人か自分の座席に座りました。僕はずっと立ってたけど(笑)。

桜井「じゃあ今日は、初恋の話をしましょう。あのー・・・中学の頃はね、もうそんなの全くなかったんですよ。恋の気配もなくって。でも、童貞のまま死にたくない!って思って共学の高校に行きまして・・・」
観客「(笑)」
桜井「で、入ってすぐ彼女ができて。もう、ずーっと一緒にいましたね。休み時間も、昼休みも、放課後も、ずっと一緒にいた。」

場内からは「羨ましいー!」といった女性ファンの声が多数あがる。

桜井「高校から、メジャーデビューするまで、約7年間、付き合ったんですけど」
観客「(どよめき)」
桜井「ちょうどデビューアルバムのEverythingのレコーディングをしているときに・・・あの、ラヴソングで僕が書く詞があまりに優しすぎてですね、プロデューサーの小林武史さんが「・・・桜井、世の中の女はな、ただ優しいだけの男なんか求めちゃいないぞ」と。」
観客「(笑)」
桜井「で、彼女に相談したんですよ。「プロデューサーがこんなこと言うんだけどさぁ・・・」って。そしたら「カズちゃん・・・」って。あ、あの、僕と正式な彼女になった人からは僕「カズちゃん」て呼ばれてるんです。1回か2回の人はだいたい「桜井さん」とか「桜井くん」なんですけど(笑)」

すると観客席からは「カズちゃーーん!!!」の嵐。中には男のファンが図太い声で「カズちゃぁぁーん!!!」と叫ぶと場内大爆笑。桜井さんも思わず笑みがこぼれる。

桜井「いやいや、違うでしょ(笑)。話聞いてた?僕と、正式に彼女になった人が「カズちゃん」て呼んでるって。(君達とは)関係も持ってないし(笑)。」
観客「(笑)」
桜井「で・・・まぁ結局その彼女とはいろいろうまくいかなくなって、破局を迎えたわけですけども・・・。あのね、こないだ人間ドックに行ったんですよ。そしたら僕の体にはなんか病気にかからない抗体ができているらしくって。先生に言われたんです。「B型肝炎になったことありますか?」って。「いや、ないです」って答えたんですけど、「あなたにはすでに抗体ができてる」って。あの・・・その彼女が生まれながらにして、その病気を持ってて、僕は週2回くらい、自転車で二人乗りして病院に行ってたんです。で、僕は病院の待合室で彼女を待って・・・。その彼女とずーーっと一緒にいたことによって、僕の体には抗体ができてたという。・・・なんか、素敵な思い出をくれただけでも十分なのに、体まで・・・守ってくれて、感謝しています。今は、どこで何をしているか、わかりません。・・・・・・・知る必要もない。・・・・・・・曲、行こう!」

初めて明かされた桜井さんの初恋の話。なんとも桜井さんらしい、心温まる恋バナだった。ちくしょーカッコいいなー。
そして演奏されたのは花言葉。「コスモスの咲く季節に君は去った」という歌詞は当時の彼女のことを歌っているのだろうか。なんとも暖かく、かつ切ないメロディラインはまさにミスチルサウンドの王道とも言える曲だ。

演奏が終わり拍手に包まれる中、再びMCへ。

桜井「えー・・・次やる曲は、友達の結婚式でも歌った曲で・・・たぶんここにいる全ての人達の、恋愛の一場面に当てはまる曲だと思います。」

そう言うと桜井さんは聞き覚えのないフレーズをアコギで弾き始めた。そしてそのままAメロを歌い始める。私は久しぶりすぎて何の曲だかさっぱり思い出せずにいた。しかし「口笛を遠く・・・」のフレーズで「あっそうか!」と思った。口笛だった。私は生で聴くのは初めてだったこともあり大感激。このとき桜井さんが目を閉じて微笑みながら歌う表情がスクリーンの映し出された。何て幸せそうに歌うんだろう。

そしてラストは桜井さんがまさに「口笛」を吹いて終わった。ため息とともに歓声があがる場内。これでラヴソングは終わりかと思いきや、なんと抱きしめたいが始まった。まさかの展開に場内大歓声。しかも演奏は完全にオリジナルバージョンのまま演奏された。間奏で浦さんがサックスをスタンバイして集中している姿が目に入って、その間はずーっと浦さん見てました。しかし何度聴いてもこの曲の間奏は美しすぎる。

会場にいる誰もが癒され、一呼吸置いた後はPink〜奇妙な夢へ。「シフクノオト」の中からでは、何気に楽しみにしていたナンバーである。直前の「抱きしめたい」から一転し、この曲からはまた別のミスチルワールドに一気に引き込まれていくことになる。

続いては静かなピアノの音色に場内は物音ひとつしないほど静まり返る。血の管。スクリーンには赤い線で心臓を象ったようなCGが描かれていた。出だしは非常に暗いどんよりとした曲調だが、歌詞の主人公が昔好きだった人のことを思い出している間は暖かい曲調に一変する。そして最後はまた現実に戻る。今回のライブで演奏された曲順と同じく、アルバムでも「Pink」の次に収録されていたが、この「血の管」は「Pink」の続きを意味しているのかもしれない。

「血の管」が終わるとそのまま演奏は止まることなく、流れるようにへ。スクリーンにはまさに「掌」が映し出される。ここに出てきた掌はおそらく「シフク」行きのバスに乗って旅している男のものだ。Aメロで桜井さんは自分の掌を見つめながら歌っていた。

この「掌」はほんと素晴らしかった。CDで聴くのより何倍も良い。というのも間奏から最後のサビにかけて、オリジナルとは違うアレンジが施されていた。「それぞれの夢、それぞれの暮らす場所、それぞれの愛、それぞれのWorld」といったコーラスが加えられていたのだ。桜井さんが「それぞれのWorld!!!!」と叫ぶところはまさに鳥肌が立った。

演奏が終わると場内が暗くなる。しばらくの沈黙。すると聞き覚えのあるギターの音色が。ニシエヒガシエだった。しかし例のギターの音色はところどころ途切れ途切れになっていた。最初機材トラブルかと思ったが、どうもそういうアレンジだったようだ。するとステージ上の一部分に青い照明が灯る。そこにはソファーに座った桜井さんが食い入るようにTVを見つめていた。カメラマンがステージ上の桜井さんのすぐ近くでビデオを回していたため、その姿がスクリーン上にも映し出されていた。

TVの内容はテロや戦争の映像。イラクやアメリカ、北朝鮮のニュースなどが各国の映像をベースに流れている。このニシエヒガシエはライブでは毎年演奏されているが、毎回、桜井さんはこの曲で目が完全にイってしまっている。特に今年はやや怖さを覚えるほどだった。いつしかTVに映し出されていたニュースはステージ上の桜井さんの映像に切り替わる。しかし相変わらずイっちゃった目でそのTVに写っている自分を食い入るように見つめながら、1番を歌い上げる桜井さん。

そして1番のサビが終わると場内が一旦暗くなり、間奏で一気に明るくなり、巨大なバンドサウンドが響き渡る。思わず場内からも大歓声があがる。「この指とまれー!!」では興奮のあまり右手を突き上げる。

最後はまた違うアレンジになっており、「知らなきゃ良かった」などのフレーズを口ずさむとともに、スクリーンにはその文字も映し出されていた。このアレンジもまた秀逸だった。

会場が一気にヒートアップしたかと思いきや、演奏が終わると今度はスクリーンに「close your eyes」の文字が。これは実際に目を閉じて、という意味なのだろうか?とりあえずわたしは目を閉じてみることにした。するとどこかで聴いたことのあるフレーズが。なんと、まさかまさかのImageだった。これは99年のDISCOVERYツアー以来だからおよそ5年ぶりの演奏となる。

「楽しく生きてくイメージを膨らまして暮らそうよ」
「大切なものはいつも目の前に転がっている」

目を閉じながらこの曲を聴いていると、それだけでなんだか幸せな気持ちになってくる。ニシエヒガシエからのつながりで、知らなきゃ良かったようなツライことも味わうけど、楽しく生きていこうというメッセージも込められていたのだろう。サビでパッと目を開けると一気にステージが明るくなる。思わず涙がこぼれそうになった。

最後のフレーズは目を開けながら聴く。
「楽しく生きてくイメージを膨らまして暮らそうよ この目に写る全てのことを抱きしめながら」

この曲はそれまで自分が抱えていた嫌なこと全てを拭い去ってくれた。私にとってはまさにシフクの曲だった。

そしてシフクのトキはまだまだ続く。
続いてはスクリーンに雲の映像が映し出されるとともに、なんとovertureが流れてきた。思わず心の中で「うわっ....」と感嘆の叫び声をあげた。Dec21で演奏されたあの曲が、まさか再び聴けることになろうとは!この曲に続くのはもちろんあの曲しかない。蘇生。Dec21のときに思わず感動のあまり涙してしまった、私にとっては思い出深い大切な曲だった。本当に、まさかこの曲だけは聴けるとは思っていなかったので、一瞬頭の中が真っ白になった。

そしてサビの部分で桜井さんが再び私の目の前に走ってきた。私は笑みを浮かべながら思いっきり桜井さんに向かって歌い上げた。全てがうまく行き過ぎて怖かった。ほんとにこれは現実なんだろうか?と何度疑ったことか。最高に幸せな一時だった。

場内も最高に盛り上がった状態で、今度は中川さんのベースとシンセパッドの音色が響き渡る。アレンジはオリジナルとは違っていたが、これはもう聴いた瞬間にすぐわかった。Dec21と同じアレンジだったからだ。youthful days。これは私がミスチルの中で最も好きな曲かもしれない。最高。ほんと最高だった。途中またしても桜井さんが近くに来る。そして「僕は思う その仕草 セクシーだと」の部分では私の右斜め上のスタンドにいたファンたちを指差しながら歌う。もちろんその周辺からは「ギャーーー!!!!」という悲鳴のような歓声で大変なことになっていた。

Dec21のときと同じ仕草で自分を指差しながら何かを叫ぶ桜井さんが印象的だった。しかし未だに何を叫んでいるのか、まったくもって謎だが(笑)。

まさかまさかの蘇生とyouthful daysを聴けただけでもう個人的にはお腹一杯。しかしライブはまだまだ続く。このシフクのトキはいつまで続くのだろう。

今度はJENが「ドン、ドドン」というリズムでキックを入れる。「何の曲だろう?」と思っていたが、いつしか聞き覚えのあるイントロが流れ出した。くるみだった。スクリーンには4人に姿がそれぞれのスクリーンに映し出される。これもライブの方が何倍も良かった。目を閉じながら、幸せそうな笑顔で歌い上げる桜井さんの姿がずっとスクリーンに映し出されていた。この姿を見て、さらに桜井さんの虜になっちゃった女性ファン続出だっただろうことは言うまでもない。

続いては「ドン、ドン、ドン、ドン」というキックが響き渡る。思わずそれに合わせて拍手をするファン。そしてスクリーンにバスの映像が。天頂バス。オープニングで「シフク」行きのチケットを持っていた男を乗せたバスが、天頂めざして走って行く。「Yeahhhhh!!!!!」というサビの叫びは圧巻。ファンは右手を突き上げる。場内が1つとなって、天国へ昇っていく。
「全力疾走で駆け抜けろ」という部分で桜井さんがステージの向こう側からこちら側へまさに全力疾走してきた。大興奮状態のまま、私は昇天した(笑)。

演奏が終わってもどよめきと歓声に包まれている場内。すると静かにギターの音色が。これもDec21のときと同じようにアレンジされたイントロだったためすぐにわかった。HERO。スクリーンに再び4人の映像が映し出される。

もう、何も言うことはなかった。「あぁ、これで本編は終わりだな」と思った。それくらい完璧なセットリストだった。Dec21のとき、アンコール最後の最後で演奏されたこの曲は、今回のライブを締めくくるのにあまりに相応しすぎる曲だった。思わずため息が出た。

そして「どうもありがとう」と言いながらステージを去るメンバー。私はしばし呆然としながらも、メンバーが見えなくなるまで拍手を送りつづけた。そして一旦着席する。我に帰ったつもりだったが、思い返してみても、なんだか心ここにあらずの状態だったように思う。場内からはアンコールを求める拍手が続いていた。

しばらくするとそのファンの声援に応えるかのようにメンバーが再登場。もちろん大歓声があがる。いつの間にかステージ上には一番前の方に様々な楽器がセッティングされていた。そしてメンバーが全員ステージ前方に勢ぞろい。これは嬉しい誤算。

桜井「どうもありがとう!」
観客「(歓声)」
桜井「えー、JENを近くで見たいという人のために(笑)。」

すると場内はJENに対する大歓声。JENはそれに対して満面の笑みとジェスチャーで答える。微笑ましい一時だった。

桜井「なんか今日は、こうやって(360℃ファンに)囲まれてるせいか、すごく皆を近くに感じるコンサートになったと思います。もっと近くに感じたいので・・・」
観客「(歓声)」
桜井「知ってる人は一緒に歌ってください。」

私はどんな曲でも歌える自信があったので「っしゃーー何でも来いやーー」と思っていた(笑)。すると予想だにしなかった曲が流れてきた。なんとMirrorだった。「あり得ない!!!!」と嬉しい悲鳴をあげたのは言うまでもない。まさかここで「深海」からのナンバーが聴けるなんて・・・。しかも田原さんがグロッケン叩いてる!(笑)

「LOVE LOVE LOVE....」と優しいメロディが鳴り響く。もちろん場内のファンも一緒に歌っている。誰もが皆笑顔だった。ライブひとつで、ここまで人を幸せな気持ちにさせてくれるバンドが他にいるだろうか。

演奏が終わるとステージ上に大勢のスタッフが出てきてセッティングを始めた。メンバーがそれぞれもといた位置に戻っていく。そして桜井さんが静かに口を開く。

桜井「えー、ここで大切なメンバーを紹介させてください。」
観客「(拍手&歓声)」
桜井「アコーディオンとキーボード、浦清英。」
観客「(拍手&歓声)」
桜井「ほとんどのコーラスは彼が担当してくれています。キーボード、SUNNY。」
観客「(拍手&歓声)」
桜井「ドラムス鈴木英也。」
観客「(拍手&歓声)」
桜井「ベース中川敬輔。」
観客「(拍手&歓声)」
桜井「そしてチンチン(←グロッケンのこと)と(笑)、ギター、田原健一。」
観客「(拍手&歓声)」
桜井「ボーカル桜井和寿でした。どうもありがとう。」
観客「(拍手&歓声)」

そして桜井さんがギターを弾きながら「ディカプリオの出世作なら・・・」と歌い始める。そこで客席からなんと拍手が沸き起こった。やはりファンみんな、この曲の素晴らしさを熟知していたのだろう。それは私がアルバム「シフクノオト」で一番好きな曲でもある、タガタメだった。

ただ曲が素晴らしいということだけでなく、この曲を目の前で歌い上げた桜井和寿に感動した。いや、感動というよりも、感服した。言葉がなかった。こんな歌を目の前で聴けただけで私は幸せだった。この日ライブに参加して良かったと思えた。この1曲だけで7000円分以上の価値があると思えた。本当に素晴らしかった!

演奏が終わるとスクリーンに映像が映し出された。そこにはオープニングで出てきたバス。そしてその手前に佇む1人の少年。すると少年は目の前に1枚の紙切れが落ちていることに気づく。拾い上げるとそれは「シフク」行きのチケットだった。少年はチケット握り締め、バスに駆け込んでいった。

スクリーンが真っ白になった。とともに、静かで美しいピアノの音色が流れてきた。私はその瞬間、オレンジが落下していく映像が頭に浮かんだ(笑)。そして思わず場内からは拍手が沸き起こる。Sign。スクリーンには再び4人のモノクロ映像が映し出される。ここでも桜井さんは目を閉じながら、そして時には笑みを浮かべながら歌い上げていた。無意識のうちに私も一緒に口ずさんでいた。不思議と一緒に歌っていると心が安らぐ。心の奥の方にあったもやもやしたものが全て綺麗に洗い流されるようだった。そしてシフクのトキは幕を閉じる。

最後に再び桜井さんが「僕たちに欠かすことのできないサポートメンバー」といって、浦さんとSUNNYさんを再び紹介した。場内からは暖かい拍手が送られ、サポートメンバー2人は先に退場。ステージ上にはミスターチルドレン4人が残った。場内にはいつのまにかBGMで「言わせてみてぇもんだ」が流れていた。

桜井「ミスターチルドレンでした。どうもありがとう。」

「ありがとうを言うのはこっちの方だ」と、感謝の気持ちを込めて、私は拍手を送りつづけた。ステージ上から彼らがいなくなっても、ひたすら拍手を送りつづけた。



Mr.Children
Tour 2004 "シフクノオト" at 横浜アリーナ (2004/6/13)

  1. 終わりなき旅
  2. 光の射す方へ
  3. PADDLE
  4. Innocent World
  5. 花言葉
  6. 口笛
  7. 抱きしめたい
  8. Pink〜奇妙な夢
  9. 血の管
  10. ニシエヒガシエ
  11. Image
  12. overture
  13. 蘇生
  14. youthful days
  15. くるみ
  16. 天頂バス
  17. HERO
    Encore.
  18. Mirror
  19. タガタメ
  20. Sign


-おわりに-

毎度のことながら彼らのライブは色んなものを与えてくれます。それはきっと何気ないことなんだけど、普段生活している上ではなかなか気づかない、大切なものだったりして。今回のライブではまさに至福の時を過ごさせてもらったわけですが、特に今回はメッセージ性が強かったように思います。「シフク」行きのバスに乗って旅をしているようでした。

オープニングの「終わりなき旅」から始まって、いいことばかりじゃないし、知らなきゃ良かったってこともあるし、でも希望を持って、楽しく生きてくイメージを持って暮らして、どんな暴風雨が襲ってきても、全力疾走で駆け抜けよう、と。しかしそれはまさに今自分達が直面していることでもあり・・・。

そして最後は子供が「シフク」行きのバスに乗り込みます。それは、自分達が経験してきたことを、自分達の子供の世代も経験していくんだと。でも、次の世代の子供たちが少しでも楽しい人生を送れるためにも、住み良い社会を作っていくためにも、自分達がやるべきことはたくさんあるんじゃないかと考えさせられました。

また、彼らはAPバンクの活動もやってきました。桜井さんは音楽活動でお金を稼ぐことに対しても疑問を抱いていたようですが、そういった活動とか彼らの今の姿勢が、掌とか、ニシエヒガシエとかのアレンジにも強く込められていたように思います。

いつも彼らのライブでは感じるもの、学ぶものが多いんですが、今回はほんと心に響きましたね。とにかく、ライブに参加できて幸せでした。たくさんのシフクノオトをありがとう、と言いたいです。

では一緒に楽しんだファンの皆さんお疲れ様でした。
次回、横浜国際競技場でのライブでまた会いましょう。
2004.6.16 youhei


©1998-2007 youhei All Rights Reserved.