Show Wesugi
SOLO LIVE 2006 [Galaxy] at 渋谷クラブクアトロ (2006/2/18)
|
上杉昇、ソロとしては2004年11月の"L.O.G"以来、約1年3ヶ月ぶりのライブとなる。会場は渋谷クラブクアトロ。ここに来るのは昨年、あのTHE HIVESのライブ以来、約4ヶ月ぶりだった。
今回の整理番号はFC162番。せっかくなので早めに行って前の方でライブを観ようと思い、17時30分には会場近くに到着。すぐ近くのドトールでミラノサンドとコーヒーを注文し、エネルギー(?)を補填する。すると、隣に座ったカップルもこの日上杉のライブに行くようで。
「ファンってどれくらいの年齢層の人が来るんだろうね」とか「きっと俺達と同じくらいの人達ばっかじゃない」とか、思わず「俺もそう思います」って話しかけたくなったけどさすがにやめときました。
そして17時55分頃、いざ、会場のあるパルコへ。
すると入り口付近はもうものすごいファンの数で人だかりができていた。さすがにWANDS、al.ni.coのヴォーカルを経験したこともあり、いまだに根強い人気のようだ。私の身の回りには彼のファンは誰一人としていないため、これだけ多くのファンを目にするとなんだか嬉しくなる。
会場に入りロッカーに荷物をつめる。そしてカウンターでオロナミンCを注文し、ステージへ向かう。そして真正面、前から6、7列目あたりのポジションをゲット。ドリンクを飲みながらじっと開演を待つ。
しかしクアトロは前回来たときと比べて雰囲気がガラリと変わっていた。HIVESのときはもう開演ギリギリに来たから、一段上がったところの一番後ろの方から観てたせいもあると思うけど。でも相変わらずあの柱はジャマだなぁ(笑)。なんとかならないんだろうか。
でもクアトロって確かあのオアシスやレッチリもライブやってるんですよね。まだ駆け出しの頃だけど。もちろんal.ni.coも99年にやってるけど。そんな歴史を振り返るような気持ちでライブの開演を待ってると、次第と感情も高ぶってくる。
開演時間の19時を20分ほど過ぎた頃だろうか。ゆっくりと照明が落ち、Black out in the Galaxyが流れ出す。上杉の声はまだ聴こえてこない。SEだけが鳴った状態だ。同時にファンが一斉に押し寄せてきた。幸か不幸か、ステージ上のマイクスタンドまでもうほんの1、2メートル付近のところまで近づくことができた。ライブハウスでここまで前の方に行ったのは、おそらく2003年のスカパラ@クラブチッタ以来。そして例の上杉の声が流れ出すとそれだけで場内はすさまじい歓声に包まれる。とともにフロアはもうぐちゃぐちゃの状態に。
そしてメンバーが1人1人、ステージ上に姿を現した。テツさん、ミチアキさん、堀越さん・・・そしてびっくりしたのがPATAとD.I.E。PATAは「ひょっとしたら」とは思っていたけど、まさかD.I.Eまでが来るなんて!もうこの瞬間から僕のテンションは上がりに上がりまくってました。
あのX JAPANのメンバーとして毎年東京ドームのステージに上がっていたPATAのプレイを、まさかクアトロで観ることができるなんて、正直夢のようだった。
しかし上杉がなかなか出てこない。まだかまだかと待ちわびる。その間ももちろん場内からは物凄い歓声があがっている。
そしてついに上杉登場。耳を劈くような大歓声とともに、オープニングはなんと私がアルバムの中で最も好きなUnknown。そして演奏と同時にステージ上がパーッと明るくなり、上杉が目の前に姿を現した。
・・・近い!マジでこれは近すぎる。手を伸ばせば届きそうな距離にあの上杉がいた。今日は赤いTシャツの上にお馴染みの白衣。そしてバンダナにサングラスをしていた。もみくちゃになりながらも、私は必死に上杉を観て、一緒に歌い上げた。演奏が終わると飛んで散れへ。イントロで上杉が「Ah---------!!!!」と叫ぶ。いきなりライブはこの日最高潮とも言える盛り上がりに。
ちなみにこのとき私の隣にいた男がずーっと右手を挙げていて、それがモロに僕の顔面に当たっていた。飛んで散れの後に払いのけて難を逃れたが、おそらくあと2、3分続いていたらマジでぶん殴っていただろう(笑)。
続いては雨音。これを聴くといつも前回のソロライブ"L.O.G"を思い出す。あのときアンコール最後に歌われたこの曲での大合唱は未だに忘れられない。今回も同じように大合唱。最後の「Down...」で手を下ろしながら歌う上杉の姿が目に焼きついた。
そして最初のMCへ。
上杉「・・・・・ブエノスノーチェス。」
観客「(大歓声)」
上杉「・・・・・ボンジュール。」
観客「(笑)」
上杉「なんか今日の客は威勢がいいなぁ。」
観客「(大歓声)」
上杉「アルバム買った?」
観客「(買ったー!)」
するとファンの一人が「めっちゃ聞いてるで!」と叫ぶ。関西弁のこのファンは、終始MCで突っ込んでいた。それは追って書いていくことにする、
上杉「えー、今日はひさびさのワンマンってこともあって、どうなるかわかりませんが・・・最後まで、一生懸命、楽しみながらやらせてもらうんで、よろしく。」
続いては寂寥たる荒野に。この「寂寥」って初めて観たとき読み方が全くわからなくて(笑)。歌詞カード見ながらCD聴いてようやくわかりました。(ちなみにファンの人はわかってるとは思いますが「せきりょう」と読みます)
そしてMC。
上杉「”WANDSの頃からファンでした”・・・ってメールをよくもらうんだけど・・・・・・アルニコ抜かすんじゃねぇよ!」
観客「(笑)」
上杉「聴いてないやつは、通販で、もしくはネットで・・・オークションでもいいから、取り寄せて聴きなさい。」
観客「(笑)」
上杉「アルニコ聴かないってことはなぁ・・・ドラマで言うと・・・・・・第一回と最終回だけ観てるようなもんだ。」
つまりWANDSが第一回で、今の上杉が最終回という意味なのだろう。すると関西弁のファンがすかさず「終わったらあかんがな!」突っ込み。
上杉「・・・・・・・・・細かいことはいいんだよ(笑)」
観客「(爆笑)」
上杉「次にやるのは・・・10年以上前の曲。」
観客「(歓声)」
上杉「・・・たぶん。」
そして演奏されたのはSame Side。WANDS時代の中で私が最も敬愛する曲だ。アレンジは変わっていたが、それでもイントロの時点で物凄い歓声が。そしてもうAメロから凄い大合唱になっちゃって。さすがにこのときばかりは目頭が熱くなった。サビのラストの「Same Side」の連発は、もう喉がかれるくらい叫びまくった。演奏が終わった後も、ファンからの歓声はやまない。「上杉最高!」とか、「同じ側(Same Side)に行けたよ!」と言ってるファンもいた。
しかしまだサプライズは続く。なんと演奏されたのは晴れた終わり。これも久しぶりだ。おそらく最初のソロライブ"One On One"以来だと思う。もちろん上杉の歌声も圧巻だったのだが、影の立役者と言ってもいいのがD.I.E。オリジナルと同じようなストリングスを見事にシンセで演奏していた。やっぱりこの曲は弦があった方が何倍も良い。al.ni.coのときもソロのときも、ライブではキーボードはいなかったが、今回初めてD.I.Eがキーボードに入ったことによって何倍も厚みが増したように感じる。そういう意味でも、D.I.Eのサポート加入は大正解だったと言えよう。
演奏が終わるとMCへ。
上杉「えー、ここからは、至福の時間です。みんなにとっては便所タイムかな。」
観客「(笑)」
上杉「でも便所タイムもある意味至福の時間なんだよ。。」
観客「(笑)」
上杉「えー、では、大好きな曲をやります。」
明らかに上杉の曲ではないイントロが流れてきた。しかし私はどこかで聴いたことのある曲だな、と、演奏中、必死に何の曲だったかを思い出しながら聴いていた。そして「Hurts me」のところで、何の曲だったのか、はっきりと思い出した。と同時に、私は「嘘だろーーー!!!!」と思わずその場で叫んでしまいそうになった。
それはまさかまさかのPEARLYだった。これがこの日一番の驚きだったと言っても過言ではない。まさか上杉がRadioheadの楽曲をカバーするなんて、誰が予想できただろう。しかもパーリーなんて。パラノイドならたぶん知ってる人多いと思うけど、パーリーなんて!でもそういう曲をさらりとカバーするところがまさに上杉らしい。
続いてはJeff BuckleyのYard Of Blonde Girl。これはもはや上杉のライブではお馴染みの楽曲。Ja-paloozaでも演奏されていることもあり、聴きなれたファンも多かったようだ。
続いてはこれまたアルバムの中では大好きな昼の月へ。人気があるせいか、イントロから歓声があがる。ミチアキさんがステージ前に出てきたが、なんか見た目が柴さんにソックリだったのは僕の気のせいでしょうか(笑)。
そしてライブは怒涛のクライマックスへ突入していく。なんとTOY$!、LORELEI、(New shit) Tough Luck、TANGOと、立て続けにハイナンバーを連発!LORELEIは何度聴いても最高に盛り上がる。思わず私もその場でずーっとピョンピョン飛び跳ねてました。そして生まれ変わったTough Luckはあまりにも強烈。間奏では思わずヘドバンしたくなるほど興奮した。
TANGOは最初全く違うフレーズで演奏してて、突然上杉が「ワン、ツー、スリー、フォー」と言うから驚いた。こ、心の準備が・・・(笑)。「ひとぉぉぉぉぉつ!!ふたぁぁぁぁぁぁつ!!!」の部分ではもちろん指を突き上げて叫ぶ!叫ぶ!叫ぶ!じゃがたらのカバーだけど、このTANGOはもう完全に上杉昇の楽曲になってしまっていた。それくらい圧巻なパフォーマンスだった。
上杉もファンも、息を切らしながらMCへ。
上杉「(ハァ、ハァ)・・・えー・・おかげさまで上杉は、今年で、15周年を迎えました。」
観客「(大歓声)」
上杉「一歩一歩、足を、踏み外しながら、ここまでやってきました。」
観客「(爆笑&大歓声)」
上杉「足を踏みしめてるやつらとはワケが違うんだよ!」
観客「(大歓声)」
上杉「えー・・これからも、足を踏み外しながら、一歩ずつ進んでいくんで、よろしく。」
「足を踏み外しながら」って一言で片付けられるほど、単純なものではないと思う。本当に彼にはいろいろなことがありすぎた。個人的には、B-Gram Recordsにいたアーティストは全員足を踏み外した経験があるのではないかと思っているが(笑)。いわゆる商業主義体制にどっぷりと浸かってしまっていたのだから。それに気づいて、自からWANDSというビッグネームを捨てた上杉の勇気ある行動は、なかなかできることではないと思う。しかしそういうところこそが、僕の考えるところのロックであり、上杉の思想にも通ずるものがあった。だから僕はこうして上杉を追い続けているのだ。
そしてParade、THE GROUND'S NAME IS 零と続き、ライブは一旦終焉を迎える。
しかしここで事件が起きた。
「THE GROUND'S NAME IS 零」の、ちょうど一番のサビを歌い終えたところで、上杉が突然マイクスタンドを倒し、ステージ裏へ足早に去っていったのである。
すぐに出てくるかと思いきや、その気配はない。そしてバンドメンバーも上杉のボーカルがないまま、演奏を続ける。PATAやD.I.Eは至って普通に演奏していたが、堀越さんはステージ裏をチラチラとみて、明らかにちょっと動揺していた。ファンも次第に不安が募ってきて、ざわつき始める。
演奏が終わってメンバーが去った後も、場内は騒然。
「どうしたのーーー!」とか「上杉さーーん!」とか、中には「アンコール!」を求める声もいたが、なんかそれは違うんじゃないかと思ったりして。
僕は上杉の体調に何らかのアクシデントがあったのではないかと感じていた。だから今日のライブはこれで終わりかなと本気で心配していた。
そして15分か20分は経過しただろうか。照明が明るくなり、メンバーが再登場。上杉も、何事もなかったかのように登場し、場内は大歓声。そしてそのままBlindman's Buff、さらにNIRVANAのAneurysmへ。
このBlindman's Buffが、上杉にとってこの日一番のパフォーマンスだったと言えるだろう。それくらい物凄いステージだった。「神がかっていた」という表現が最も適切かもしれない。目を見開き、声を震わせながら歌い上げる上杉を見て、私は恐怖すら覚えた。
そして最後のMCへ。
上杉「えー、来年・・・・来年じゃねぇや、今年で、15年目になるんだけど、まだまだ、やってないことがたくさんあって・・・例えば野外ライブとか・・・」
観客「(大歓声)」
上杉「カバーアルバムとか・・・」
観客「(大歓声)」
さらに「あとは?あとは!?」とファンからの質問に対し、上杉は・・・。
上杉「あとは・・・ヌード写真集とか。」
観客「(爆笑)」
上杉「まぁそんなこんなで、そういう意味も込めまして・・・poo pee people。」
待ってました!ラストはやっぱりこの曲poo pee people。この日最後だと言わんばかりに、上杉もファンもこれ以上ないというくらいの盛り上がりを見せる。もはや上杉の喉は限界に来ていたせいもあり、サビでは原キーの声は全く出ていなかった。しかしその分は俺らがカバーしてやるぞ!と言わんばかりに、ファンがみんな一緒になって上杉の代わりに歌いあげた。
「サンキュー」と叫んで、上杉とメンバーはステージを去った。
やっぱりオルタナのライブは重い。でもこの感覚を味わったことのない人は、人生を半分くらい損してる気がするな。と、そんなことを思いながら、私は夜の渋谷の街を後にした。
冷たくて痛いはずの冬の夜風が、とても心地よく感じた。
Show Wesugi
SOLO LIVE 2006 [Galaxy] at 渋谷クラブクアトロ (2006/2/18)
|
- Blackout in the Galaxy
- Unknown
- 飛んで散れ
- 雨音
- 寂寥たる荒野に
- Same Side
- 晴れた終わり
- PEARLY(Radiohead)
- Yard Of Blonde Girl(Jeff Buckley)
- 昼の月
- TOY$!
- LORELEI
- (New shit) Tough Luck
- TANGO
- Parade
- THE GROUND'S NAME IS 零
Encore.
- Blindman's Buff
- Aneurysm(NIRVANA)
- poo pee people
|
-おわりに-
感じたことが山のようにあって、何から書いていいのかわかりません。
ただ、上杉のライブは一言で言うとカタルシスのようなものかもしれない。特に昔からのファンの人は、上杉が経験してきたことを良く知ってるから。そして何よりも、今の上杉は最高に充実しているということがよく伝わってくるライブだったし、今の上杉と今の僕だからこそ、共感できるものがあって、それが何より心地よかったし、嬉しかった。それは、僕の思うところのロックと、上杉の思うところのロックが非常に近い位置にあるからだと思う。
僕にとってロックってもともと反逆精神とか、政治や社会などの大きな問題に対する投げかけだとか、要は「反逆性」や「非支配者性」といったイメージが強くて。というか、ロックとは本来そうあるべきものなんじゃないかと今でも思ってます。だからよくテレビでラブソングとか安っぽいラブ&ピースを歌っているミュージシャンがロックを語っている姿を見ると非常に滑稽に思える。
WANDS時代の上杉は、僕が言うところのロックをやろうとしてたとは思うんですよね。もともとそういう音楽をやりたかったはず。でもできなかった。それはレコード会社や周りの環境など、様々なしがらみが重なってできなかったのだと思う。WANDSが売れなければまだ良かったのかもしれない。
本来ならば、ミュージシャンて名前が売れれば売れるほど、自分のメッセージをより多くの人に伝えることができるのに、WANDSがあれだけビッグネームになってしまったからこそ、上杉は本当のメッセージを世に送ることができなくなってしまった。何とも皮肉な話である。(特にWANDS後期の作品では、そんな上杉の苦悩がよく伝わってくる。)
そして今の上杉は、恐怖や困難と言った部分を世に伝えたいと言う。普通の人間ならば目を背けたくなるような部分を歌いたいと思っているのだ。
世界平和を訴えたいなら、ボノのようなミュージシャンに任せておけばいい。LIVE8のようなイベントができるのは世界中探してもボノしかいないから。ならば上杉は上杉にしかできないことをとことんやってもらいたいと思う。
プラスとマイナス。陰と陽。光と闇といった具合に、世の中は相反する存在があるからこそ成り立っている。
今の上杉が伝えるロックは、いわば「闇」なのかもしれない。しかしながら、闇を知らない者は本当の光の明るさや暖かさやなど知る由もないと思うし、本当の光など差し込んでこないと思う。それは僕の人生における哲学にも通ずるものがある。
この日、渋谷の小さなライブハウスで見た光景は、それはそれは美しいものだった。
雨上がりのBright Lightsのように。
上杉昇、15周年本当におめでとう。そして素晴らしいライブをありがとう。
最後に、一緒に楽しんだファンの皆さん、お疲れ様でした。またいつか、上杉のライブで会いましょう。
2006.2.25 youhei
©1998-2007 youhei All Rights Reserved.
|
|